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特集> 男前の条件 > 有名人が語る男前の条件「美波」
00年、深作欣二監督作品『バトル・ロワイアル』でスクリーンデビュー。『さくらん』(07)、『ROBO☆ROCK』(07)、『デトロイト・メタル・シティ』(08)などの他、蜷川幸雄、栗山民也、野田秀樹など、日本を代表する名演出家による舞台にも挑み、着実に実績を積んでいる女優・美波。その美しい外見と、自分を表現するために必要だと日舞や踊りにも励み、日々磨かれている演技力は、まだ24歳とは思えない貫禄を備えている。そんな美波の最新作『乱暴と待機』では、人に嫌われることを極端に恐れるあまり、妙な行動を繰り返す面倒臭い女・奈々瀬を、滑稽かつ気迫ある演技で見事に演じている。
美波
美波
スゴイ女優だな。映画『乱暴と待機』を観れば、きっと誰もが美波のことを、そう思うに違いない。
兄妹でもない男・英則を「お兄ちゃん」と呼び、ひとつ屋根の下で暮らし、自分の姿態を天井から覗かせている。そして、その「お兄ちゃん」が、もう長い間思案中であるという最も惨い復讐が下されるのを、逃げることなくひたすら待っている。「お兄ちゃん」とは、毎晩二段ベッドの上下で眠りながら、体を許したことがないというのに、近所に引っ越してきた夫妻の旦那・貴男に迫られると、元同級生の妻・あずさを大事にしてくれるなら‥というワケの分からない理由で誘いに応じる。しかも学生時代にも、あずさの彼氏と過ちを犯してしまい、今も恨まれ続けているにも関わらずである。どの行動をとっても摩訶不思議な女・奈々瀬。美波は、この奈々瀬を見事な演技力で演じている。
「スゴイ世界だなって思いましたね。何だか強烈なお話だし、すごく密閉された、ジップロックの中に入った気持ちになりました。この世界観の中の登場人物になるには、相当キテレツな人でないと、たぶん入ることさえできないと思います」
演じた張本人、美波でさえそう思ってしまう役柄。しかし、おそらく美波はキテレツではない。
「だから、監督から奈々瀬の動きや癖のお手本を見せていただいて、結構練習しました。一生懸命でしたね。奈々瀬自体も一生懸命な女性だし、ちょうどリンクできたのだと思います。ただ、こんな人がいたら嫌だなあ、友達にはなりたくないなあとは思います(笑)」
美波
美波
美波
 確かに、友達にはなりたくない。かなり厄介度の高い女である。なのに、不覚にも奈々瀬の発言に共感したり、奇妙な行動をカワイイと思ったりしてしまうのである。そうさせてしまうのは、普段ではあり得ないと思える役柄でも、「演じていて、奈々瀬の気持ちなのか、私の気持ちなのか分からないことも結構ありました」という現象を起こしてしまう、美波の演じ方によるところであり、そこが、美波をスゴイ女優だと思わせる所以でもある。例えば、映画の序盤。奈々瀬が失禁してしまうシーンがある。
「かなり屈辱を味わいました。今思っても傷つきますね。振り返ってみて、みっともない姿を人に見られちゃう経験って、すごくトラウマになりますよね。ただ、演じているときは、奈々瀬って(失禁するときよりも)ずっと前から生活しているわけだから、そこだけにインパクトを持たせるっていうのは絶対したくなかったんです。ただ、理解することが必要だとは思いました。何故失禁するまで我慢していたのか、そこまで全部理由があるわけなので」
 どんな役柄でも、過去にさかのぼって何故その行動を起こすのかまで理解する。自分と役柄の間に線はひかず、どちらの感情かさえ分からなくなる。そんな風に演じているからこそ、奈々瀬が絶対周りに居て欲しくないと思うと同時に、愛すべきキャラクターにもなり得るのかもしれない。
「今回に限らず、この役をいただいたのだから、この役を表現できるのは私しかいないのだと思うと、毎回すごく愛情が湧いて、演じることに対して責任っていうのかな、守りたいって思うんですよね」
美波
美波
 自分の仕事に責任を持つ。美しい女性でありながら、美波に対して男前を感じてしまうのは、美波のそんな姿勢からくるのかもしれない。
「男前っていう意味がよく分からないんだけど‥。ちっちゃい人じゃないってことですよね。それで言うと、(冨永昌敬)監督は男前ですよね。現場を引っ張っていって、天候だったり時間だったり、いろんな悪条件の中で映画を良くして愛情をすごく注いでいらっしゃって。それはもう、現場に入る前からついていくってすごく思いました。あと、自意識っていうのが変な方向に向かない方が男前なのかな。例えばワイシャツがいつも後ろから出ているような人は、自意識が足りない人だし、そういう人には何か頼もうと思わないですね。100は絶対返って来ないと思うんです」
 そう言われてみると、この映画に出てくる男性ふたり、「お兄ちゃん」こと英則と、関係を持ってしまう妻ある男・番上は、男前とは決して言いがたい。
「それでも女性って、そういう男性に惹かれる部分があるんですよね。男性の方には、彼らのことを笑ってるけど、自分もそういう要素あるでしょ?って言いたいです。恋人がいる方は、ぜひ彼女と見て欲しいですね。女性って恐ろしい部分もあるんだよっていうのも分かると思います」


『乱暴と待機』
(c)2010 「乱暴と待機」製作委員会
10月9日(土)よりシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、10月16日(土)より京都シネマにて上映
“演劇界の芥川賞”岸田國士戯曲賞を受賞し、小説『生きてるだけで、愛』『あの子の考えることは変』が芥川賞候補に選出されるなど、演劇界・文学界で注目の女性作家・本谷有希子の、『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(07)に続く映画化作品。美波の他に、常人の理解を超越した陰湿な男・英則を浅野忠信、恐ろしいほどの気迫で奈々瀬に詰め寄る番上の妻・あずさを小池栄子、無職の情けない男・番上を山田孝之‥と名優たちが勢ぞろい。
『パビリオン山椒魚』『パンドラの匣』などで、多才ぶりを発揮している冨永昌敬監督が、どう考えても非日常でコミカルな光景を、いつしか「もしかしたらあり得るかも‥?」と思ってしまう、マジックにかける。笑いながらも最後はジワリとさせる秀作。
プレゼント
美波さんのサインが入ったプレスシート(マスコミ向けに配られる映画の概要が書かれたパンフレット、非売品)を1名様にプレゼント。ご希望の方は、件名に、「乱暴と待機」プレゼント希望と明記し、住所、氏名、年齢、電話番号を書いて、11月5日(金)までにsite@inlifeweb.comまで、どしどしご応募ください!
※当選の発表は、商品の発送をもって代えさせていただきます。
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